
目次
- 1 user@sinyblog:~/article ❯ 01_basics.md対数(log)とは何だったか — 5 分でおさらい
- 2 user@sinyblog:~/article ❯ 02_formula.md公式 log(MN) = log M + log N の意味
- 3 user@sinyblog:~/article ❯ 03_proof.mdなぜ掛け算が足し算になる? 指数法則からの導出
- 4 user@sinyblog:~/article ❯ 04_examples.md計算例 5 パターン
- 5 user@sinyblog:~/article ❯ 05_reverse.md逆方向の活用 — 足し算を掛け算に戻す
- 6 user@sinyblog:~/article ❯ 06_use_cases.mdこの性質は何の役に立つのか?
- 7 user@sinyblog:~/article ❯ 07_visualization.md補足 — データ可視化での対数スケール
- 8 user@sinyblog:~/article ❯ 99_summary.mdまとめ
Math Foundations · 高校数学を学び直す
対数(log)の公式 log(M×N) = log M + log N を見て「なぜ掛け算が足し算になるのか?」と疑問を持った経験はありませんか。本記事では、この一見不思議な変換の理由を 指数法則からの導出 と 5 つの具体的な計算例 で完全に理解できるよう解説します。電卓も Python も不要、紙とペンで追える内容です。所要時間 10 分。
user@sinyblog:~/article ❯ 01_basics.md対数(log)とは何だったか — 5 分でおさらい
まず対数の定義を簡単におさらいします。対数 loga M は「底 a を何乗すると M になるか」を表す数です。
ax = M のとき、x = loga M
言葉にすると「a を x 乗 したら M になる」と「a を底とする M の対数は x」は同じことを言っています。
具体例で確認しましょう。
102 = 100なので、log10 100 = 223 = 8なので、log2 8 = 3103 = 1000なので、log10 1000 = 3
つまり対数とは「指数の世界の数字を引っ張り出してきたもの」と理解しておくと、これから出てくる「掛け算が足し算になる」性質がスッと入ってきます。
user@sinyblog:~/article ❯ 02_formula.md公式 log(MN) = log M + log N の意味
本記事の本題、対数の最も重要な公式が以下です。
loga(M × N) = loga M + loga N
「掛け算の対数」は「対数の足し算」に等しい。
言葉で書くと当たり前のことを言っているように見えますが、これは 掛け算という重い計算を、足し算という軽い計算に変換できる ということを意味しています。
例えば 100 × 1000 という掛け算は、両辺で 10 を底とする対数を取ると以下のようになります。
- 左辺:
log10(100 × 1000) = log10 100000 = 5 - 右辺:
log10 100 + log10 1000 = 2 + 3 = 5
確かに両辺が等しい(=5)ことが確認できます。掛け算の世界(100×1000)を、足し算の世界(2+3)に持ち込んで処理できているわけです。
user@sinyblog:~/article ❯ 03_proof.mdなぜ掛け算が足し算になる? 指数法則からの導出
「便利な公式」として丸暗記しても使えますが、なぜそうなるのか を理解しておくと忘れにくくなります。鍵になるのは中学・高校で習った 指数法則 です。
ap × aq = ap+q
同じ底の指数同士の掛け算は、肩の数(指数)を足し算する。
ここから対数の積の公式を導出してみます。
-
M と N をそれぞれ a の指数で表す
M = ap,N = aqと置く。対数の定義から
p = loga M,q = loga Nとなる。 -
M × N を指数法則で書き換える
M × N = ap × aq = ap+qここで指数法則を使って、肩の数を足し算にまとめた。
-
両辺の対数を取る
loga(M × N) = loga(ap+q) = p + q「a を
p+q乗したらap+qになる」ので、対数の値はp+q。 -
p, q を元の表記に戻す
p + q = loga M + loga Nしたがって、
loga(M × N) = loga M + loga Nが成立する。 ∎
つまり、対数の積の公式は 指数法則「肩の数同士の足し算」を、対数の世界に持ち込んだものに過ぎません。両者は同じ現象を別の角度から見ているだけ、と理解すると一気にスッキリします。
user@sinyblog:~/article ❯ 04_examples.md計算例 5 パターン
頭で理解できても、実際に手で計算してみないと身につきません。底を変えながら 5 つのパターンを解いてみます。
| # | 計算式 | 分解(対数の足し算) | 答え |
|---|---|---|---|
| 1 | log10(100 × 1000) |
log10 100 + log10 1000 = 2 + 3 |
5 |
| 2 | log2(8 × 4) |
log2 8 + log2 4 = 3 + 2 |
5 |
| 3 | log10(10 × 100 × 1000) |
log10 10 + log10 100 + log10 1000 = 1 + 2 + 3 |
6 |
| 4 | log3(9 × 27) |
log3 9 + log3 27 = 2 + 3 |
5 |
| 5 | log2(16 × 32 × 64) |
log2 16 + log2 32 + log2 64 = 4 + 5 + 6 |
15 |
パターン #3 や #5 のように、項が 3 つ以上になっても同じ。掛け算の項が増えるほど、対数の足し算に変換するメリットが大きくなる ことが直感的に分かります。例えば 5 個の数字を直接掛け算するのは大変ですが、対数を取って足し算するなら一瞬です。
対数を取る数が 底のべき乗で表せる ように分解するのが計算のコツです。例えば log2 32 なら 32 = 25 なので log2 32 = 5 とすぐ分かります。
user@sinyblog:~/article ❯ 05_reverse.md逆方向の活用 — 足し算を掛け算に戻す
公式は両方向に使えます。「対数の足し算」が出てきた時に、それを「掛け算の対数」に戻すと式がシンプルになることがあります。
loga M + loga N = loga(M × N)
対数の足し算を見たら「中身を掛け算にまとめられないか?」と発想する。
例題: log10 5 + log10 2 の値は?
- 足し算を見たら掛け算の対数に戻す:
log10 5 + log10 2 = log10(5 × 2) - 中身を計算:
log10(5 × 2) = log10 10 - 10 を底とする 10 の対数なので、答えは 1
もしこの公式を知らなければ、log10 5(約 0.699)と log10 2(約 0.301)を別々に計算機で出して足し算する必要がありました。公式を使えば 計算機なしで暗算できる問題 になります。
user@sinyblog:~/article ❯ 06_use_cases.mdこの性質は何の役に立つのか?
「掛け算が足し算になる」ことの実用上のメリットは、大きく 2 つあります。
① 計算がしやすくなる(歴史的背景)
計算機もコンピュータも無かった時代、巨大な数の掛け算(例: 天体の軌道計算、航海術の三角関数表)は途方もなく大変でした。そこで先人たちは 対数表 を作り、掛け算を「対数を引いて → 足し算 → 対数表で逆引き」という手順に変えることで、膨大な計算量を削減しました。
これは対数の発明者 ジョン・ネイピア(1614 年) の本来の目的でもあり、現代の電卓やコンピュータが普及するまで数百年に渡って科学計算を支えた基礎技術です。
② 極端に小さい数の掛け算でアンダーフローを防ぐ(現代の応用)
確率計算では、独立した事象の確率を何度も掛け算します。例えば 5 つのイベントの結合確率が 0.05 × 0.001 × 0.0004 × 0.02 × 0.0001 となると、答えは 4 × 10-15。これをさらに何重にも掛け算していくと、コンピュータの数値表現の限界を超えて 0 と区別できなくなる(アンダーフロー) という問題が起きます。
そこで「掛け算 → 対数を取って足し算 → 必要なら最後に指数で戻す」という戦略が使われます。これが 対数尤度(log-likelihood) や クロスエントロピー といった機械学習の用語に「log」が入っている理由です(ここでは詳細に踏み込みませんが、興味があれば「対数尤度」で検索してみてください)。
user@sinyblog:~/article ❯ 07_visualization.md補足 — データ可視化での対数スケール
対数のもう一つの用途として、グラフの「対数スケール」があります。掛け算→足し算の話とは少し違いますが、対数の有用性を示す代表例として補足しておきます。
例えば商品別の売上金額をそのままグラフにすると、金額の大きな商品だけが目立ち、金額の小さい商品の差が潰れて見えません。

そこで売上金額の対数を取ってグラフ化すると、大小関係は維持しつつ、小さい値の差も見えるバランスの良いグラフ になります。

これは対数が「大きい数を圧縮し、小さい数を相対的に拡大する」性質を持っているからで、地震のマグニチュード、音の大きさ(デシベル)、pH 値など、自然界の指標にも広く使われています。
user@sinyblog:~/article ❯ 99_summary.mdまとめ
本記事のポイントは 3 つです。
- 対数の積の公式
log(MN) = log M + log N。掛け算の対数は対数の足し算と等しい。 - 導出は指数法則
ap × aq = ap+qから。対数は「指数の世界の数字を引っ張り出してきたもの」と理解すると、両者が同じ現象を見ていることが分かる。 - 逆方向にも使える。対数の足し算を見たら掛け算にまとめると、計算がぐっと楽になることがある。
「掛け算が足し算になる」という一見不思議な性質も、指数法則と並べて見ればごく自然な現象です。電卓やコンピュータが普及した現代でも、確率計算や機械学習の内部処理で生き続けている、強力なツールであり続けています。

